2008.5.18
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「着いた」
了の呟いた一言に、現実に引き戻された梓は慌てて時計を確認し、胸を撫で下ろした。
(よかった。ギリギリ間に合った……。これも御剣のお陰っす。ああ!お礼言ってない!!)
「あの、ありがとうっす。御剣くんが来てくれなかったら、自分、遅れてたっす」
素直にお礼を述べる梓に、了は眼を細めて表情を和らげた。
「気に―――」
「君たちー、ゆっくりするのは着席した後の方がいいと思うよ?」
気にするな、と言うつもりの了だったが、第三者によってそれは阻まれた。にこり、と笑みながら艶夜が聞き惚れるような美声で二人に対して言葉を紡いだ。了は声の主を静かに見据え、梓は突如聞こえた楽器の名器による旋律のような声に身を硬くした。
「そうだよ。御剣君、姫松君、急いだ方がいい」
穏やかな声で、二人を促すのは藤林だ。梓と了は教官の姿に気付くと、敬礼をした。
「はい、藤林教官!」
「了解」
一人は弾かれたように返事をし、一人は教官に対する適切な返答を返すと、会場へと足を踏み入れた。
会場に入った梓は、その雰囲気に圧倒され、思わず足を止めた。
(何度来ても、この雰囲気には慣れないっす。何というか、場違いな気がする、っす)
「大丈夫だ」
ぽん、と暖かい何かが梓の頭に置かれた。梓は一瞬、何か分からなかったが、了の手である事を理解した。了の顔を仰ぎ見ると、彼は穏やかな微笑みを梓に送った。
「はいっす」
その微笑みに勇気が湧いてきた梓は意を決して会場の、入隊前の生徒の席へと歩を進めた。
入隊式の始まる定刻となり、式が滞りなく進んでいる中、梓は辺りがそわそわと落ち着かない事に気付いた。
(何か、騒々しいっす。どうしたんだろう?)
梓は辺りを見回していると、後ろで教官たちが焦った様に声を殺して、言葉を交わしている。
「前代未聞だぞ、入隊式のスピーチをする主席生徒が遅刻なんて!」
「全くだ、鬼目は一体何処にいるんだ!?あの、馬鹿が!!」
(鬼目くん、遅刻!?た、大変っす!)
あわわ、と当の本人でないにも関わらず、梓は本人を代弁するかのように焦っていると、不意にざわっ、と会場がざわめいた。その声に気付いた梓は何だろうと疑問符を上げながら、会場中の視線を集めているのが会場の出入り口だと気付いた。そちらに眼をやると鮮やかな蒼が眼に入った。けれど、その蒼は決して澄み渡った空の色を思わせるものではなく、自然の脅威を思わせる極寒の海。総てを飲み込む荒波。そんな蒼の髪を持つ少年が、会場に入ってきた。その後ろを二人の生徒が歩いている。一人は、秘色色(ひそくいろ)の髪を持つ少年。彼はとても、申し訳なさそうに俯いて歩いている。もう一人は、鮮やかな赤の髪を持つ少年。彼は楽しげに笑いながら、歩いている。
梓の視線は、蒼の髪を持つ少年から逸らされることは無い。
「鬼目、八尋くん」
無意識の内に、梓は呟いた。怖い人だ。梓が八尋に対して直感的に抱いた感想だ。それは深く、彼の心に絡みつき、畏怖の視線を八尋に向けていた。
八尋が入ってきた事を見つけた教官は、彼に駆け寄り、いくつか言葉を交わすと、すぐに舞台へと足を向けた。その表情は、苛立ちを押し殺した表情だった。八尋は何事も無かったかのように舞台に上がり、入隊の決意表明を述べた。至極、冷静に。
自らの仕事をやり遂げた八尋は席に着くと、盛大な溜息をついた。
(何で、あんな面倒な事を俺がやらなければならないんだ?全く)
心の中で悪態をつくと、背筋を伸ばし前を見据えた。舞台の教官ではなく、あくまで前を。すると、こちらを畏怖の視線で見ている人物が居ることに気付いた。未だに苛々が収まっていない八尋は、視線の元を睨みつけた。彼は相手を思いやる気持ち、というものが欠如していたらしい。すると、睨みつけられた人物はビクリ、と肩を震わせると長々と演説を続ける教官へと視線を移した。
(一体、何なんだ?)
もう一度、大きく溜息を吐くと八尋は寝る事に決めた。入隊式で有益な情報を提供するとも思えないからだ。取るに足らない、話ばかりをするだけだ。
そこまで、考えると八尋は思考を中断し、瞼を閉じた。
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自己紹介:
(Mao) このリレー小説のいいだしっぺ。大まかな世界観を担当しました。それ以外では影のような存在です(笑)。文章の方は幾分拙いですが、よろしくお願いします。
(神楽椿) 提案に乗っかる形でリレー小説に参加。世界観を考えてくれるような素晴らしい相棒と共に執筆を頑張る所存でございます。どうぞ、生暖かい眼で見守ってやってください。
(神楽椿) 提案に乗っかる形でリレー小説に参加。世界観を考えてくれるような素晴らしい相棒と共に執筆を頑張る所存でございます。どうぞ、生暖かい眼で見守ってやってください。
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